大阪地方裁判所 昭和37年(行)18号 判決 1966年2月14日
芦屋市松の内町一七番地
原告
塚本正二
右訴訟代理人弁護士
藤原竜男
大阪市東区大手前之町
被告
大阪国税局長
近藤道生
右指定代理人
叶和夫
同
山田俊郎
同
戸上昌則
右当事者間の所得税査定金額に対する更正決定取消請求事件について、当裁判所は昭和四〇年一二月二日終結した口頭弁論にもとづき、次のとおり判決する。
主文
一、原告の請求を棄却する。
二、訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一、申立て
(原告)
一、被告が昭和三七年一月二三日付をもつてした原告の同三二ないし三四年度所得税に関する各審査決定は、そのうち、
同三二年度分につき、総所得金額六〇九、七六二円、課税所得金額五二二、二〇〇円、所得税額一〇八、二八〇円、無申告加算税額二七、〇〇〇円、重加算税額五四、〇〇〇円を超える部分を、
同三三年度分につき、総所得金額一、〇八九、八四〇円、課税所得金額九九九、八〇〇円、所得税額二一一、二五〇円、無申告加算税額五二、七五〇円、重加算税額一〇五、五〇〇円を超える部分を、
同三四年度分につき、総所得金額七七二、九二〇円、課税所得金額六八二、九〇〇円、所得税額一二五、五〇〇円、重加算税額六〇、五〇〇円を超える部分を、
それぞれ取り消す。
二、訴訟費用は被告の負担とする。
(被告)
主文同旨。
第二、請求書の原因
一、原告は同三二、三三年度分所得税額につき確定申告書を提出せず、同三四年度分所得税額を四、四〇〇円として芦屋税務署長に対し確定申告をした。同税務署長は、いずれも同三五年七月一九日付をもつて、同所得金額およびその税額を別紙一に記載の金額とする旨の同三二、三三年度については決定を、同三四年度については更正をして原告に通知した。
二、原告は同三五年八月一五日同税務署長に対して再調査の請求書(ただし、無申告加算税額と重加算税額を除く)を提出したが、同年一一月一一日に税務署長の右請求を棄却した旨の通知を受けた。原告は、同年一二月三日被告に対し審査の請求(無申告加算税額と重加算税額を含む)をしたが、被告は同三七年一月二三日付をもつて右請求を棄却する旨の決定(ただし、無申告加算税額と重加算税額については、再調査請求の手続を経ていないので、審査請求の要件を欠き不適法として却下する旨の決定)をし、同月二五日原告にその旨の通知が送達された。
三、同三二ないし三四年度における原告の総所得金額、課税所得金額、所得税額は別紙二、三、および四の原告主張額欄に記載のとおりである。また、無申告加算税額は決定に係る不足額について徴収され、重加算税額が無申告加算税額の計算の基礎となつた所得税額、または過少申告加算税額の計算の基礎となるべき追徴税額について徴収されるものである。結局、原告に課せられるべき所得税額が前記のとおりであり限り、これらの付加税はこの額に応じて二に紙別記載のとおりに徴収されるべきである。したがつて被告のなした前記各審査決定は、そのうちの原告主張の右各金額を超える部分の原決定を支持した範囲が違法であるから、その取消しを求める。
第三、答弁
一、請求原因一、二の事実は認めるが、同三の事実は争う。
二、原告の係争各年度における所得額は、別紙四の被告主張額欄および五に記載のとおり税務署長決定の原処分額を上廻つているから、これより内輪の金員を認定のうえでした被告の審査決定には、なんらの違法はない。
三、訴外作元さと、源正真に対する利息収入について
原告の借受人に対する貸付金額とその利率の平均は、別紙六に記載のとおり合計一、〇八〇、〇〇〇円と月四分九厘であつて、債権額の低額のものは比較的に高率であり、高額のものは低率である。原告の作元さと(貸付金二五〇、〇〇〇円)と源正真(同八〇〇、〇〇〇円)に対する貸付金は、原告としては低額の部類に属するので、その利率を月五分と推定した。
四、原告は借受人訴外滝口万太郎との同三三年九月三日付金銭消費貸借(貸付金三、〇〇〇、〇〇〇円)についての代物弁済契約にもとづいて、同年一一月一七日同人所有の宅地(大阪市天王寺区鳥ケ辻町三八番地の一、地階二六八七坪)を取得し、これを同年一二月二六日訴外樽本虎一に三、五〇〇、〇〇〇円で売り渡した。そこで原告は、売渡額三、五〇〇、〇〇〇円と貸付金三、〇〇〇、〇〇〇円との差額五〇〇、〇〇〇円からすでに利子収入に計上済である第二月分の利子一二〇、〇〇〇円を差し引いた三八〇、〇〇〇円の利益をえている。
第四、証拠
(原告)
甲一号証の一ないし一一と二、三号証を提出。証人河井うた、山口初次郎の各証言と原告本人尋問の結果を援用。乙一号証の一と五、六、一一、一七、一八号証は官署作成部分の成立を認め、その余の部分の成立は不知、一号証の二、三と二、四、七、八、一〇、一九ないし二三号証、二四号証の一、二は不知、その余の乙号各証の成立は認める。
(被告)
乙一号証の一ないし三、二ないし二三号証、二四号証の一、二二五号証を提出。証人山田俊郎、北島喜代四郎、山口長久、土手金雄、森内栄一、市川増雄(一、三回)、片岡英明、宅見博三、石村才造、吉岡庄一、野村一夫の各証言を援用、甲三号証は成立を認める、その余の甲号各証は不知。
理由
一、芦屋税務署長が原告主張のような所得税に関する決定および更正の処分をなし、これが原告に通知されたこと、原告主張のとおり再調査の請求は棄却されたこと、原告主張の審査の請求を被告が棄却(ただし、無申告加算税額と重加算税額については却下)したことは、いずれも当事者間に争いがない。
二、左記証拠文書の成立認定表の成立を認めるために採用した証拠欄記載の証拠によると、同表書証番号欄記載の文書が真正に成立したことが認められる。
証拠文書の成立認定表
<省略>
なおつぎに採用する書証中、乙三、九、一二ないし一六号証は、いずれも成立に争いがない。
三、左記利息収入認定表の中残に記載された証拠を総合すると、上段に記載された原告の利息収入を認定することができる。右認定に反する下段記載の証拠は、中段記載の証拠と対比すると採用できない。
利息収入認定表
<省略>
三二年度合計 五七四、九五〇円
三三年度合計 二、一四六、一〇〇円
三四年度合計 二、五九七、五〇〇円
四、原告の各年度の総所得
(三二年度)
不動産所得が二九四、九六二円であることは当事者間に争いがない。門田作二からの利息収入が二〇〇、〇〇〇円以上であることも当事者間に争いがない。右金額に前記利息収入認定表の三二年度の利息収入額合計五七四、九五〇円を加算すると、一、〇六九、九一二円となり、その余の所得を加算するまでもなく、当該年度の原告の総所得額が、原処分認定額の一、〇六四、九一二円を超過することが明らかである。
(三三年度)
笹部正一または笹部次郎からの利息収入が一七、〇〇〇円、福田留雄からの利息収入が一四〇、〇〇〇円、山崎精からの利息収入が三〇、〇〇〇円であることは当事者間に争いがなく、また、不動産所得が三〇〇、八四〇円以上であり、門田作二からの利息収入が四四〇、〇〇〇円以上であることも当事者間に争いがない。右金額に前記利息収入認定表の三三年度の利息収入額合計二、一四六、一〇〇円を加算すると、三、〇七三、九四〇円となり、その余の所得を加算するまでもなく、当該年度の原告の総所得額が、原処分認定額の二、七六三、一五〇円を超過することが明らかである。
(三四年度)
原告の不動産所得が三〇〇、九二〇円以上であることは当事者間に争いがない。乙七、八号証と証人森内栄一、土手金雄の証言を総合すると、門田作二よりの貸付金二、〇〇〇、〇〇〇円の遅延利息収入は、少くとも六六一、七六〇円(一月から六月までの利息収入は、月三分であるから三六〇、〇〇〇円、七月以降は、日歩八銭二厘であるから三〇一、七六〇円)であることが推認できる。これに反する甲一号証の三、証人河井うたの証言、原告本人の供述は、前掲の各証拠および証人山口初次郎の証言と対比して採用できない。甲二号証は、原告本人の供述によると門田に対する計算書の一部であることが認められるから、前記認定と矛盾するものではない。
右金額に、前記利息収入認定表の三四年度の利息収入額合計二、五九七、五〇〇円を加算すると、三、五六〇、一八〇円となり、その余の所得を加算するまでもなく、当該年度の原告の総所得額が、原処分認定額の三、五一六、一一〇円を超過することが明らかである。
五、以上のとおり、芦屋税務署長のした同三二、三三年度については決定、同三四年度については更正の各処分における原告の総所得の認定に、原告の不利益となる違法がなかつたものといわなければならない。しからば右総所得の認定が過大であることを前提とし、原処分を支持した被告の審査決定を違法なりとする原告の請求は、その余の点につき判断を加えるまでもなく失当である。
よつて訴訟費用の負担につき民訴八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 前田覚郎 裁判官 木村輝武 裁判官 白井皓善)
別紙一
(原処分庁認定額、単位円)
<省略>
別紙二
(原告主張額、単位円)
<省略>
別紙三
(原告の主張による三三、三四年度の不動産所得の明細表)
(一) 総収入金額
<省略>
(三三年度)
(二) 必要経費
(イ)(ロ)に対する固定資産税、都市計画税(督促手数料、延滞金を含む)
三二、三三〇円
(ハ)(ニ)に対する固定資産税、都市計画税
三三、一九〇円
合計 六五、五二〇円
(三) (一)から(二)を控除した金額(不動産所得)
三〇〇、八四〇円
(三四年度)
(二) 必要経費
(イ)(ロ)に対する固定資産税、都市計画税
三二、二五〇円
(ハ)(ニ)に対する固定資産税、都市計画税
三三、一九〇円
合計 六五、四四〇円
(三) (一)から(二)を控除した金額(不動産所得)
三〇〇、九二〇円
別紙四、(事業所得の明細表)
(一) 昭和三二年度
<省略>
(二) 昭和三三年度
<省略>
(三) 昭和三四年度
<省略>
別紙五
(被告主張所得額)
<省略>
別紙六
被告主張貸付債権額と利率
<省略>